人手不足と生産性向上の要請が高まる中、協働ロボット(コボット)は中小製造業から飲食・物流まで急速に普及しています。しかし「導入費用が高い」「まず試してみたい」という企業にとって、リース契約は最も現実的な選択肢です。本記事では、協働ロボットのリース費用相場からメーカー比較、補助金活用、安全基準まで網羅的に解説します。
協働ロボットとは|従来の産業用ロボットとの違い
協働ロボットの定義
協働ロボット(Collaborative Robot、略称:コボット)とは、人間と同じ作業エリアで柵なしに動作できるロボットです。従来の産業用ロボットは安全柵で区切られた専用エリアに設置するのが原則でしたが、協働ロボットは力覚センサーや衝突検知機能により人間との接触を検知すると即座に停止します。
国際標準規格ISO 10218およびISO/TS 15066によって協働動作の安全要件が定義されており、「動力・力の制限(PFL)」「速度・分離監視(SSM)」「手動誘導(HG)」「安全定格監視停止(SRMS)」の4モードが規定されています。
従来の産業用ロボットとの主な違い
| 比較項目 | 協働ロボット | 従来の産業用ロボット |
|---|---|---|
| 安全柵 | 原則不要(リスクアセスメント次第) | 必須 |
| 可搬重量 | 3〜35kg程度 | 3〜2,300kg |
| 導入コスト | 150〜500万円(本体) | 500〜3,000万円以上 |
| 設置スペース | 小(台車搭載移動も可) | 大(専用ラインが多い) |
| プログラミング難易度 | 低(ダイレクトティーチング対応) | 高(専門技術者が必要) |
| タスク変更の柔軟性 | 高(マルチタスク対応) | 低(ライン変更に大工事) |
協働ロボットが向くタスク
ねじ締め・組み立て・溶接・検査・ピッキング・パレタイジング・配膳補助・ラベル貼りなど、人間が繰り返し行う単純作業全般に適しています。特に多品種少量生産を行う現場や、レイアウト変更が頻繁な職場で威力を発揮します。
主要メーカー比較|6社の特徴と代表機種
Universal Robots(UR)|世界シェアNo.1
デンマーク発のURは協働ロボット市場のパイオニアで、世界シェア約50%(2024年時点)を誇ります。UR3e(可搬3kg)、UR5e(5kg)、UR10e(10kg)、UR16e(16kg)、UR20(20kg)のラインナップがあり、いずれもダイレクトティーチングと豊富なURCapプラグインエコシステムが特徴です。日本法人はユニバーサルロボット株式会社として展開しています。
ファナック|CRシリーズ
国内最大のロボットメーカー、ファナックの協働ロボット「CR(Collaborative Robot)シリーズ」は、既存のファナックコントローラとの互換性が高く、既にファナック設備を持つ工場への追加導入に最適です。CR-4iA(4kg)〜CR-35iA(35kg)まで幅広く、緑色の特徴的な筐体は力制限機能によって安全性を確保しています。
安川電機|MOTOMANシリーズ
安川電機のHCシリーズ(Human Collaborative)は最大可搬重量35kgのHC35DTなど、重量物対応の協働ロボットが強みです。YRC1000miniコントローラとペンダントによる直感的な操作を実現しており、溶接・組み立て・ハンドリングに実績があります。
ABB|GoFaシリーズ
スイスのABBが提供するGoFa(CRBシリーズ)は、最大5kgまでの軽負荷精密作業に特化した協働ロボットです。1秒間に最大2.2mの速度で動作し、OMNICORE E10コントローラとの組み合わせで高精度な経路制御を実現します。医療機器・電子部品組み立てなど精度重視の用途に適しています。
川崎重工|duAroシリーズ
川崎重工のduAroは世界初の双腕スカラ型協働ロボットです。人間の上半身に近い動作を実現し、両腕を使う組み立て・箱詰め作業に適しています。コンパクトな設計で人間の作業スペースにそのまま導入できる点が特徴です。
KUKA|LBR iisy/iiwaシリーズ
ドイツKUKAのLBR iiwaは7軸の冗長自由度を持ち、狭い空間での複雑な動作が可能です。トルクセンサを全関節に内蔵しており、力覚フィードバック精度が高く、精密組み立てや医療・研究用途で高い評価を受けています。
| メーカー | 代表機種 | 最大可搬重量 | リーチ | 強み |
|---|---|---|---|---|
| Universal Robots | UR10e | 10kg | 1,300mm | 豊富なエコシステム・世界シェアNo.1 |
| ファナック | CR-35iA | 35kg | 1,813mm | 重量物対応・既存ファナック設備との親和性 |
| 安川電機 | HC35DT | 35kg | 1,813mm | 重量物・溶接実績豊富 |
| ABB | GoFa CRB 15000 | 5kg | 950mm | 高精度・医療・電子部品向け |
| 川崎重工 | duAro2 | 2kg×2アーム | 600mm | 双腕・人間作業スペース置換 |
| KUKA | LBR iiwa 14 R820 | 14kg | 820mm | 7軸冗長・全関節トルクセンサ |
リース費用相場|月額3〜15万円の内訳
費用の内訳と相場
協働ロボットのリース費用は、ロボット本体価格・リース期間・残価設定・導入工事費の月割りによって決まります。一般的な相場は以下の通りです。
| ロボット規模 | 本体価格目安 | リース期間 | 月額リース料目安 |
|---|---|---|---|
| 小型(UR3e等、3kg以下) | 150〜250万円 | 5年 | 3〜5万円 |
| 中型(UR10e等、10kg) | 250〜350万円 | 5年 | 5〜8万円 |
| 大型(ファナックCR-35等) | 400〜700万円 | 5年 | 8〜15万円 |
| エンドエフェクタ込み | +50〜200万円 | 同上 | +1〜4万円 |
| SIer工事費月割り | 100〜500万円 | 5年 | +2〜10万円 |
リース料率は一般的に月額で物件価格の1.8〜2.2%程度(5年・60回払い時)です。保守・メンテナンス費用を含むフルメンテナンスリースを選択する場合は月額が10〜20%程度増加しますが、突発的な修理費用を平準化できるメリットがあります。
リースと購入の損益分岐点
協働ロボットの耐用年数は一般的に8〜10年です。5年リース終了後に再リース(月額が大幅に下がる)か購入かを選択できます。初期資金が限られる中小企業や、技術進化に伴う機種更新を想定する場合はリースが有利です。一方、10年以上同一機種を使い続ける見込みがある場合は購入の方がトータルコストを抑えられます。
導入事例5選|業種別の活用シーン
製造業|ねじ締め・組み立て自動化(中型部品メーカー)
従業員30名の自動車部品メーカーがUR10eを2台リース導入。エンジン部品のねじ締め(12箇所)を自動化し、従来3名必要だった工程を1名監視に削減。月額リース料7万円×2台=14万円に対し、人件費削減効果は月30万円超。ROI回収は約6ヶ月で達成しました。
食品業|弁当盛り付け・トレー充填(食品加工会社)
衛生管理が厳しい食品工場でのURシリーズ導入事例。食品グレードのエンドエフェクタ(吸着パッド)と組み合わせ、弁当トレーへのおかず盛り付けを自動化。従来は1ライン4名が必要でしたが、2名に削減。アレルゲン混入リスクの低減にも貢献しました。
物流|ピッキング・梱包(EC物流センター)
中規模ECの物流センターがファナックCR-7iAを3台リース導入し、ピッキングと梱包テープ貼り工程を自動化。深夜時間帯の人員が確保できない問題を解決し、24時間稼働を実現。繁忙期の臨時人材コストを年間200万円削減しました。
医療・介護|検体搬送・調剤支援(病院)
400床規模の病院が協働ロボットを採血管の検体搬送に導入。看護師の移動業務を削減し、患者ケアへの集中時間を増加。感染予防の観点からも評価が高く、コロナ禍以降需要が拡大しています。
小売|在庫確認・棚卸し支援(スーパーマーケット)
大手スーパーマーケットが協働ロボットアームをバックヤードでの棚卸し作業に試験導入。バーコードスキャナと組み合わせ、閉店後の在庫確認作業を自動化。スタッフの残業時間を月間40時間削減する成果を上げ、本格展開を検討中です。
補助金活用|ものづくり補助金・IT導入補助金
ものづくり補助金(最大1,250万円)
中小企業・小規模事業者が生産プロセスを改善する設備投資に活用できる補助金です。補助率は1/2〜2/3(小規模事業者等)で、協働ロボット本体・SIer工事費・周辺設備が対象経費に含まれます。リース契約の場合も、リース料総額の補助が受けられる場合があります(公募要領で確認が必要)。採択率は直近公募で40〜50%程度です。詳しくは補助金一覧記事をご参照ください。
IT導入補助金(デジタル化基盤導入類型)
IT導入補助金のうちデジタル化基盤導入類型では、ソフトウェアと紐づく形でハードウェア(PC・タブレット等)が補助対象となります。協働ロボットそのものは対象外ですが、ロボット管理システムのソフトウェアライセンスや周辺デジタルツールは補助対象となる場合があります。
省力化投資補助金(カタログ方式)
2024年度より始まった省力化投資補助金は、カタログ掲載製品を選ぶだけで申請できる先着順の補助金です。補助率は1/2(中小企業)、上限200万円(単独申請時)。協働ロボットのカタログ掲載数は増加中であり、対象機種の確認は公式カタログサイトで行ってください。
安全基準と法規制|ISO/TS 15066の要点
ISO/TS 15066の概要
ISO/TS 15066は協働ロボットシステムの安全要件を定めた技術仕様書です。人間とロボットの接触時の力・圧力の許容値が身体部位ごとに詳細に規定されており、リスクアセスメントの実施とSafety-Rated Monitored Stopの設定が求められます。
日本では労働安全衛生法およびJIS B 8433に基づく安全基準が適用されます。2013年の厚生労働省通達により、一定の要件を満たす協働ロボットは安全柵なしでの使用が認められるようになりました。
リスクアセスメントの実施義務
協働ロボットを導入する事業者は、設置前・設置後のリスクアセスメントを実施し記録を残す義務があります。速度・力の設定値、エンドエフェクタの形状、作業内容に応じたリスク評価が必要です。SIer(システムインテグレータ)に依頼する際は、リスクアセスメントの支援サービスが含まれているか確認しましょう。
リース・レンタル・RaaSの比較
| 方式 | 契約期間 | 月額コスト | 所有権 | メンテナンス | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|---|
| リース | 3〜7年 | 3〜15万円 | なし(リース会社) | 自社 or 別途契約 | 中長期・安定稼働・節税 |
| レンタル | 1ヶ月〜 | 10〜30万円 | なし(レンタル会社) | レンタル会社 | 短期試験導入・繁忙期対応 |
| RaaS(Robot as a Service) | 月次サブスク | 8〜25万円 | なし(提供会社) | 提供会社込み | 運用まで丸ごと委託したい場合 |
| 購入 | 永続 | 初期一括 | あり | 自社 | 長期同一用途・資産計上希望 |
RaaS(Robot as a Service)は月額サブスクリプションで、ロボット本体・設置・保守・ソフトウェアアップデートを一括提供するモデルです。READY ROBOTICSやWILLROW ROBOTICSなどが展開しており、国内でもサービス提供企業が増加中です。
導入までのステップ
STEP1: 導入目的の明確化とロボット選定
「何の作業を」「どれくらいの速度・精度で」「どのような環境下で」自動化したいかを整理します。可搬重量・リーチ・繰り返し精度・防塵防水等級(IP規格)が選定の主要パラメータです。
STEP2: SIer(システムインテグレータ)の選定
協働ロボットの設置・プログラミング・安全設計を担うSIerの選定が成否を大きく左右します。複数社に相談し、同業種・同用途の実績を確認してください。リース業者・SIer一覧でお近くの専門家を検索できます。
STEP3: リース会社への申し込みと審査
SIerまたはロボットメーカーと連携してリース会社を選定します。審査には決算書2〜3期分、会社概要、導入計画書が必要です。中小企業向けのリース審査は一般的に1〜2週間で完了します。
STEP4: 設置・ティーチング・試運転
SIerが現場設置・配線・ティーチングを実施します。ダイレクトティーチング(手でアームを動かして動作を登録)は協働ロボットの大きな利点で、専門的なプログラミング知識なしに動作を設定できます。試運転後、安全確認を経て本稼働となります。
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